■ 尻尾にまつわるエトセトラ ■




桜の花の舞い散る頃、訪問者はやってきた。


「お久しぶりっス、師匠!」
「タルル!?何しに来たですか」
「…随分っスね。休暇がもらえたんで、師匠に会いに来たんスよ」
「ふーん。丁度ペコポンでは桜が見ごろですぅ。案内してやろうか?」
「あ、いや…その」
タルルはモジモジと歯切れの悪い返事をした。
そして、意を決したように
「師匠!」
「何ですか?」
「えっと…す…。す、す…好」
「す?」
「あ、か、可愛いっスね。相変わらず尻尾が!」
どうしても目的の言葉を言えなくて、誤魔化しに発した単語が、タママの神経を逆撫でした。

「うるさーい!」

つい先程まで、新学期だ成長だみんな大人になった等の話題で皆が盛り上がる中、タママが居心地の悪い思いをしていたことなど、タルルは知る由もない。
「プリティさが僕のウリなんですぅ!」

「自分の方がちょっと早く尻尾が取れたからって、生意気ですぅー!!」
「あ、ちょ師匠ーっ!待ってっスーっ!!!」
タルルは走り去ったタママを追いかけることも出来ず、しばらくその場に佇んでいたが、やがてがっくりと肩を落とすと、何処かへ去っていった。


















「…何を見ている?」
「あ、ギロロ」

物陰に隠れてじっと何かを見つめるケロロにギロロが声をかける。
ケロロが見ていた方に目をやると――。

「アレか」
「我輩も…尻尾取れるの遅かったから、気持ちわかるんでありますよ」




どうしたもんでありましょうな、とため息混じりに呟くケロロを無言で押しのけ、ギロロが前に出た。

「ゲロ?」






そして、膝を抱え丸まったままのタママに近づく、と。
「タママ二等!」
「は、はいー!!」

突然の大声に、タママが反射的に立ち上がる。

「暇そうだな。ちょっと付き合え」
「え?」
「訓練だ。たまには思いっきり体を動かさんと鈍るからな」

首を傾げるタママを連れて、ギロロは訓練場へと向かっていった。















しばらくして、テントに戻ったギロロは。

「ふん、有り余ってやがる」
「傷だらけでありますな。ど疲れさん」
「だいぶ溜まってたみたいだぞ」

ケロロの前に座ると、傷ついた腕を差し出した。

「…タママは?」
その腕を消毒し、包帯を巻きつけながらケロロが尋ねる。
「命に別状はない」


「まぁ、ギロロがこの状態なら、推して知るべし、でありますな」
と、救急箱を持ってケロロが立ち上がると、ギロロがその腕を取って引き止めた。
「放っておけ。後は勝手に立ち直る」
つかんだ腕を軽く引かれ、ケロロは素直にその場に腰を下ろした。
「…あの時の我輩みたいに、でありますか?」
「そう、だな」


「…もっとも、オマエは逃げたりせずその場で殴りかかってきたが」
「あり?そうだったっけ?」

そう言われればそうだったような気もする、と言いながら、ケロロは再び救急箱の蓋を開けた。
脱脂綿に消毒液をしみこませ、ギロロの顔の細かい傷にポンポンとあてる。

「ありがとね、ギロロ」
「礼には及ばん。…しかし」
「ゲロ?」
「あの時お前が怒ったのは意外だったぞ?」
「またその話でありますか」
「他のヤツ等にもさんざ言われてただろう?そのときは笑って流してたような気がするのだが」
「…笑ってたってねぇ。心ん中は複雑だったんでありますよ。なのに、ギロロまで言うもんだからさぁ」
言いながら、グリグリと傷口に薬を押し付ける。
「痛っ!」
「あ、染みた?ごみんにー!」

大げさに?痛がるギロロを見て、ケロロは楽しそうに笑った。




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84848カウントを踏まれた風待様よりリクエスト「ギロケロ・幼馴染の中で一番シッポの取れるのが遅かったケロロ」
かなり遠回りな上に長い!キリリクとは思えない程の長さ!

あぁ、ブーム中のツボにはまったリクエストって怖いv(嬉しい怖さ)

腐り方が微妙なんですが、ワタクシ的には結構高濃度。。。
どこらへんがかと言いますと。
まず、ケロロにタママへのフォローをさせないギロロ。
当たり前のようにテントで待つケロロとそれを当たり前のように受け入れてるギロロ。
傷の手当をするためにタママのところへ行こうとするケロロを引き止めるギロロ。
そして、いつまでも尻尾が取れなかったケロロに「可愛い」と言ったことのあるらしいギロロ。
…いっぱいいっぱいです。

脳内妄想的には、若さ溢るるタママの相手をした(語弊)にも係わらず、この後ケロロとうにゃむにゃ…とか。
怪我をした部分をかばいながら、時々「イテッ」とか言って、ケロロの笑いを誘ったらイイと思います。

風待様、キリ番報告&リクエストありがとうございました。
このイラスト(とSS)は風待様に限りお持ち帰り可です。

…と、言ってもこの長さのものを全部持ち帰るのは大変でしょうから、一部分とか最後の絵とかだけ持って帰っていただいてもOKです。


追記
最後の部分、ちょっと修正しました。
ケロロは可愛いと言われても嫌がらないんじゃないかといわれて。
そうかも。でもここは怒って欲しい。
ということで。
誰に言われても、ギロロには言われたくなかったというそんな妄想をしてみた。(たぶん、今なら言われても気にしない)
























修正に伴い、おまけ?もちょっと変更

「…悪かったな」
「別にぃ。もう昔のことだし、忘れたであります。それに、我輩も謝らないといけないしさ」
「?」
「尻尾で殴って鼻血ブーさしちゃったこと」
「そ、それも早く忘れろ!!」



殴られたから鼻血ブーしたのか、尻尾の感触に興奮して鼻血ブーしたのか。
本人のみぞ知る。(笑)