■ a life less ordinary 4 おまけ ■



――少し、キツく言い過ぎたか…

ケロロがテントを飛び出して言った後、再び横になってはみたものの、ケロロのことが気になってどうにも眠れない。
このままでは目が冴えるばかりだと、ギロロはケロロの部屋を訪ねることにした。
さっき自分がケロロに言ったことと矛盾するような気もしないでもないが、まぁ部屋の中に入らなければ良いだろうと自分に言い聞かせて。

シンとした日向家のリビングを通り抜け、ケロロの部屋の前までやってくる。

「おい、ケロロ」
ノックをしても返事はない。

「寝てるのか?」

しかし、耳を澄ませば微かに布の擦れる音がした。
ただ、返事をするつもりはないのか、ドアを開けようとする気配はない。

――まぁ無理もない。

ギロロは小さくため息をつくと、ドアの前でケロロに呼びかけた。
「ケロロ、その…さっきはすまなかった。少し言い過ぎたようだ。
 お前の変化については、また明日、皆で話し合おう。
 知り合いに、口の堅い医者もいる。相談してみるのも良いかもしれないな」

そこでいったん口を閉じる。部屋の中からは、何の音も聞こえない。

「話は、それだけだ。…おやすみ、ケロロ」
もしかしたら、本当に寝ているのかもしれないと、ギロロはつぶやくように言って、軍曹ルームのドアに背を向けた。

ガチャ



背後からドアの開く音がして、ギロロが振り向くと、部屋の扉が少しだけ開き、うつむいたケロロが顔を覗かせていた。

「ケロ――」

「みんな、おかしいであります」


その、暗く沈んだ声に、ギロロは戸惑った。

「ケロロ?」
「ギロロも…
 クルルも…
 ドロロも…
 みんな、おかしいであります。


 でも―――


 みんなが怖…なん、て
 我輩が一番おかし…のかも
 知れな……」

最後の方は、涙声で良く聞き取れなかった。
が、ケロロが不安で怯えて悲しくて、それを自分に伝えてきているのだけは、判った。

「大丈夫だ、ケロロ」
そう言って、俯いたままのケロロを抱きしめる。

何がどう大丈夫なのか。
言っている自分も判らなかったが、腕の中で震えるケロロがいつもより一回り小さいのが頼りなくて、ギロロはさらに強く抱きしめた。
ケロロの口から、ホッと小さな息が漏れる。

それを聴いた瞬間、ギロロはケロロを安心させたいだけではない感情が自分の中に芽生えるのを感じた。

――・・・まずいな


ケロロは女扱いされるのを嫌がっていて。
でも、今のケロロはどう見ても、女そのもので。
ギロロが知っている女の扱い方は、1つだけだった。


「泣き止め、ケロロ」
――深夜に男の寝所に行くのも好ましくないが、
   逆はもっと悪いと教えるのを忘れたな

「ギロロ…?」

まぁそれは明日の朝にでも教えたら良いだろう、とケロロを片手に抱いたまま、もう片方の手で部屋の扉を閉める。

もちろん、ギロロも一緒に扉の中に入って――。








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おまけの方が本編より気合入っている気がするけど気にしない。