■ その傷が癒えるまで ■


「傷は男の勲章っていうもんねぇ〜」

「あぁ、別に気にはしとらん」


「むしろお前のつまんない顔にアクセントがついて
 ヨカッタかもね〜」

「つまんないは余計だ。
 それに外見なんぞ俺にはどうでもいい」



だから、気に病むな。



そう言うギロロの手が、ケロロの頬に伸びる。
憎まれ口を叩くケロロの、瞳の洪水は止まりそうもない。
拭っても拭っても、ギロロの指は乾く間もなく、流す涙で濡れそぼる。


「もう泣くな」
「あ〜、ナニ言ってんの。暑くってさ〜汗止まんないんだよね」
陳腐な言い訳に、負傷の戦士は苦笑するしかなかった。

大地が夕陽に染まる。
空が闇に閉ざされる前に、宿舎へ戻らねばならないのだが。

肩に置いた掌の重みにすら耐えきれずに、崩れ落ちそうな親友。
包帯に滲んだ真新しい血の跡に、ケロロの指がおずおずと触れる。

不自由な片目でますます人相を悪くして、それでもギロロは精一杯微笑んでみせた。

傷は、心臓まで穿つように痛む。
だが、涙を止めるすべを失った親友の心の痛みが、それを忘れさせた。

もう、いい、もう、泣くな。
もう一度肩を叩けば、うなだれた頭が深く深く頷いた。


文:凪さま 絵:もげ


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88888カウントを踏まれた凪様よりリクエスト「ギロロの左目は包帯を巻いた状態(滲む血の跡つき)&平然と憎まれ口を叩くのだけれど胸を痛めるケロロ」

リクエストいただいたメールに、イメージSSがついていました。
なんて美味しいリクエスト!
UPの了承を得たので、丸々載せさせていただきました。やふー!
リクエストというよりコラボ?ですね。

傷の理由は敢えてぼかしてあるそうですが、なんとなく、このケロロの状態から、誤って、というか、ギロロがケロロを庇ったとか、そんな感じを受けました。
泣かれるの、弱そうだなギロロ。(萌)
このまま、あたりが夕闇に閉ざされるまで、いや、それを過ぎてもずっとここにいればいいよ。
夜が寒ければ、二人で暖めあえばいいよ。
あーでも、ギロロ手当てしなおさないとな。

「…もう、帰らないとでありますな」
立ち上がりかけたケロロの手を、ギロロがつかむ。
「お前の『汗』、乾かさずに戻れないだろう」
「でも点呼に間に合わなくなるであります。それに――」
チラリと包帯に視線を投げるケロロの言葉をさえぎって、
「宿舎の消灯時間はとうに過ぎてる。今戻っても罰は免れん」
ギロロは腕を強く引いた。
「ゲロ。……じゃあもう少しだけ」
ケロロがその場に座っても、ギロロの手が離れることは、なかった。

みたいなー♪

タイトルの「傷」は、ギロロの物理的な傷と、ケロロの心の傷をかけてみました。
お互い、このことで何か決意してたりしたらいいなー。(妄想は永遠に続く)


凪様、キリ番報告&リクエストありがとうございました。
このイラストは凪様に限りお持ち帰り可です。