■ 壮行会 ■


待ち合わせの時刻を10分ほど遅れてギロロが店に入ると、ゼロロは既に来ていて、一人ぽつんとカウンターに座っていた。

「すまん、遅くなったな」

「ギロロくん…」

少し、驚いた顔のゼロロが振り返る。
「ケロロの奴がなぜか急に行かないと言い出してな。ったく、言いだしっぺのクセに。
 …と、まぁそんな訳で遅れた」
言いながらギロロが隣に腰掛けると、ゼロロはクスッと笑った。

「仕方ないよ。僕のせいだもん」
「は?」
「ケロロくんが来ないの、僕のせいなんだ。…ギロロくんも、来ないかと思った」
「…何故だ?」
「…昨日、告白したんだ。ケロロくんに」
「告白?何を――」
違うよ、と首を振ってゼロロは続けた。

「キスした」
「キ!?」
「もう戻って来れなくなるかもしれないと思ったら止まらなくなって、押し倒しちゃった。…めちゃくちゃ抵抗されて、諦めたけど」

何かを思い出したのか、ゼロロはまた小さく笑い――その微笑みはすぐに消えた。

「本当は、今日ギロロくんが来てくれたら、ケロロくんのことお願いしようと思ってたんだ。
 僕がいない間、悪い虫がつかないように」



「でも――」
「頼む相手を間違えたみたいだね」
「な!?別に俺は―ー」
「そんな表情して、違うなんて言わないでよ」

ゼロロに言われて、ギロロがハッと自分の顔に手をやる。
その様子を見て、ゼロロはそっと席を立った。

「ありがとう、ギロロくん。
 これで僕は絶対死ねなくなったし、一刻も早く帰ってこなくちゃならなくなった。
 …良い壮行会だったよ」

「おい、ゼロロ!!」

ゼロロは軽く手を振ると、振り向くことなく店を出て行った。



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ちり様より引越しリクエスト「ギロケロ・誰かにケロロのことを好きだと言われて初めて自分の心を自覚するギロロ」
「誰かに」というところで、ちりさんからのリクエストなんだからクルルにしたほうが喜ばれるだろうな〜とは判っていたのですが、すみません。ドロロで。すみませんすみません。趣味丸出しですみません。

という訳で、ギロロは自覚していません…でした。
今回のことで気づいたかな。どうかな。自分で自分を否定しつつ、認めざるを得ない感じになりつつ。
はっきり自覚した後も大変。壮行会前夜の様子は気になるし、ケロロの気持ちも分からないし、うかうかしてたらドロロ帰ってきちゃうし!あぁ楽しい。

ちり様、リクエストどうもありがとうございました。
この絵と文はちり様に限りお持ち帰り可です。(持ち帰らなくてもOKです!もらっても困りますものね^^;)