■ I'm glad to see you ■


「ただいま!」

元気な声とともに、ギロロが玄関に飛び込んできた。
「おかえり。どうした、ずいぶん泥だらけだな」
「別に。ケロロと遊んでただけさ」
「またケロロくんかい?」
ギロロが楽しそうに語る『ケロロ』くんは、
やんちゃだったり、
ワガママだったり、
遊びの天才だったり、
迷惑なヤツだったり、
時には頼りになったり。

一度も会ったことがないというのに、ガルルはケロロのことを良く知っているような気がしていた。

なので。

「あ、今日ケロロ達連れてきたから。
家で遊んでもいいでしょ?」

と、ギロロに突然言われたときも、ガルルは驚きはしたが、初めてケロロに会えることの方が嬉しかった。
腕白な弟を上回る、いたずら小僧の顔はどんなものか、と。
ところが。
「おじゃましまーす!」
「こ、こんにちは…」
ギロロの手招きで入ってきたのは、

――え!?女の子!?

確かに、ガルルがギロロに『ケロロ』くんの性別を直接尋ねたことはない。
しかし。

初対面でギロロと殴り合いの喧嘩をして。
野山を駆け回って毎日のように怪我をして。
蛇を捕まえては振り回し、昆虫を捕まえてはゼロロにけしかけ泣かせる。

――その『ケロロ』くんが女の子とは!!

よく見れば、将来が楽しみな可愛らしい顔立ちをしている。
その姿と挨拶の可愛らしい声を聞く限りでは、俄かには信じられなかったが、ギロロに負けず劣らず泥だらけの手足を見て、

――さもありなん

と、妙に納得していると。

「お前ら、きったねーな」
「なんだよー。ギロロだってきったねーじゃん!」
「そんなんで家にあげたら、父ちゃんに怒られちゃうよ」
「えぇー、どうしよう」

「う〜ん、そうだな」
ギロロは少し考えてから、ぽんと手を打った。
「よし、風呂に入ろう」
「そうだね、綺麗になれば、家に上がっても大丈夫だよね」
「よし、じゃあ風呂にGOだ!」
「「おぉー!」」
「ちょっと待った!」


今まで散々聞かされた、ケロロの武勇伝を思い出しながら、3人の会話を何気なく聞いていたガルルだったが、一緒に風呂に入ろうとするケロロを慌てて掴んだ。

「な〜に?ギロロの兄ちゃん」
「君は、一緒に入ったらダメだろう」
「なんで?」

「何でって…君は女の子だろう?」
「だから?」
まっすぐに見つめられて、思わず口ごもる。

「おい、ケロロ早くしろよ」
「うん、ちょっと待って! …行ってもいい?」

小首をかしげておねだりする様子は、非常に可愛らしく、
「…ダメ」
と言うのはとても心苦しかった。

――妹を持つ兄と言うのは、こんな気持ちになるものなのだろうか?
弟とはまた違った苦労があるものだと、小さくため息をつく。

「ギロロ達は後で良いから、君は一人で先に入りなさい」
と言うと、ケロロはしぶしぶ頷いた。
聞き分けの良い子だと、頭を撫でてやろうかと手を伸ばして一瞬の後引っ込める。
これが弟ならば、躊躇うこともないだろうに。

ブーブーと文句を言うギロロの頭を小突いて風呂場から追い出しながら、

――やれやれ、弟のほうが気楽だな

と、ガルルは苦笑した。



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133331カウントを踏まれたtantan様よりリクエスト「女の子軍曹で、ちびギロと、ちびゼロとともに3人で遊ぶ姿を、ガルルが物陰から見まもっている」
…思いっきり正面から眺めてますが。気にしない。
「ガルルがケロロに淡い思いを抱いている」とのご指定でしたので、それっぽく。
抱いているって言うか、これから抱くって言うか、そんな感じです。
頭も撫でられないのは、妹としてみてるからじゃないのですよ。みたいな。
たぶん、ゼロロも初対面と思われますが、眼中にないね。お兄様。

ガルルのベルトがギロロ仕様なのはワザとっす!
後にこれをギロロにあげるのですね。(まぁ、新品をあげたのかもしれないけどさ。やっぱそれじゃダメよ。萌え的に)

tantan様、キリ番報告&リクエストありがとうございました。
この絵&SSはtantan様に限りお持ち帰りOKです。