■ 尻尾にまつわるエトセトラ 3.5 ■


翌朝のこと。


「なぁおい、本当に大丈夫か?」
「平気であります。悪いのは我輩で、ギロロは関係ないし」
「いや、俺も呼び出されているし、関係ないということはないぞ」
「いーから!教官のところには一人で行くから」
「しかし――」

なおもしつこく食い下がるギロロに、ケロロの中で何かがプチンとキれた。
「ついて来るなって言ってんだよ!
 ってゆーか、お前顔赤いし!!
 つられて我輩まで赤くなるし!
 二人で赤い顔して、教官の前に出られるわけないでしょ!?」
「す、すまん…」
「赤ダルマはさっさと訓練に行くであります!!」
「赤ダルマ!?」
「何?文句あんの?」
「い、いや…」

どうして強く言い返せないのか、ギロロが首をひねっている間に、ケロロは部屋を出て行ってしまった。













夕刻。
一人教官の元へ叱られに行ったケロロが、一向にやって来ないのを気にしつつ受けた訓練の結果は散々だった。
ギロロは部屋に戻るなりベッドへ倒れむ。と、目の端に見慣れぬ白いものが映った。
ギロロへ

夜間外出の罰として、倉庫番兼掃除係を命じられちった。
運が良けりゃ深夜まで、悪けりゃ徹夜になるから先に寝ているであります。

ケロロ

今夜はケロロがいない。
そう思うと、残念なようなほっとしたような、どちらともつかぬ気持ちのまま、ギロロは眠りについた。


















ブブブブブブブブブブ
バイブの音で叩き起こされる。

「誰だ、こんな時間に」
窓に目をやれば、薄っすらと外が明るい。
もうじき日の出のようだ。
液晶に浮かぶ[ケロロ]の文字に、何故か受話ボタンを押さざるを得ない気持ちにさせられる。

『ギロロ!今すぐ倉庫に来るであります!!』

言いたいことだけ言って切れた電話に、ギロロは眠い目をこすり起き上がった。
どうしようもなく理不尽な気持ちになりながらも、それを無視することはできなかった。





「おい、ケロロ。どこだ?」

ギロロは、言われるままに倉庫までやってくると、ケロロの名前を呼んだ。
朝日の差し込む倉庫に、緑の影は見えない。
辺りを見回していると、

「こっち。ギロロ、こっち!」

積上げられた箱の後ろから、緑の手だけがちょいちょいとギロロを招いた。

「どうした?なんでそんなところに隠れて―――」





「ケロロ!?」

「へへっ。取れちゃった」
テレたように笑うその顔は、もう尻尾つきのものではなかった。

「取れちゃったって、オマエ、どうして!?」
「わっかんね。倉庫ん中って暗いし静かだし、つい寝ちゃってさ。起きたら取れてたであります」
「しかし――」
「あー、もうギロロはどうしてそうかなぁ。
尻尾取れたって言ってんだから、オメデトウでいいじゃないのよさ」
「しかし…」
「しかし何よ」
「その…、アレだ。…責任を感じてしまってな」
「!!ば、バッカじゃん!?ギロロのせいなんて、そんなワケ…」
「…」
「…」
「…ないし」
「…ないか?」
「…たぶん」
原因があって結果がある、のか。
ただの偶然か。偶然にしてはできすぎているのではないか。

ケロロとギロロの脳を、同じ思考が駆け巡る。


二人の間を流れる気まずい沈黙を打ち破るように、ケロロが口を開いた。

「とにかく!我輩の尻尾が取れたのは、ギロロとは何の関係もなし!ってことで、イイでありますな?」
「あ、あぁ…」
「じゃあ、顔赤くしない!目も不自然にそらさない!変に思われちゃうであります」
「…努力する」

と言ったギロロの顔は――ケロロの顔も――リンゴのように真っ赤なのでした。





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137137カウントを踏まれたちび助様よりリクエスト「尻尾が取れて喜ぶケロロ・その事を真っ先にギロロに知らせるケロロ」
尻尾にまつわる〜が気に入っていると仰って頂いたので、その後バージョンにしてみました。どすか?

あの都市伝説?は本当だったのか!?謎は深まるばかり。

後朝…なんて恥ずかしい瞬間!自分で描いててニヤニヤしてしまった。
昨夜に比べて、ずいぶんギロロがヘタレているような気がするけど気にしない。
不自然にならないように、と二人で示し合わせてはいるけれど、この後倉庫からギロロが出て行くのが目撃されていたりして。
その日からケロロの尻尾が取れているわけだし…訓練所内騒然!駆け巡る噂話!飛び交う憶測!
とぼけるケロロ、切れるギロロ。←台無し
75日で収まったのだろうか。


ちび助様、リクエストありがとうございました。
この絵と文は、ちび助様に限りお持ち帰りOKです。