■ a life less ordinary 4 ■


「ちょっとクルル!聞いてよー!!」

ケロロは、ギロロのテントを飛び出したその足で地下へと駆け込むと、クルルのラボのドアをガンガン叩いた。

「クルルーッ!!」
程なくして、ラボのドアが開くと、なにやら作業中だったらしいクルルは、モニターの前で迷惑そうに呟いた。

「おい、今何時だと――」

が、ケロロはそれを無視して
「どーせ起きてたんでありましょ。イイジャン。それより聞いてよ!
ギロロがひどいんだぜ!?」
と、わめいた。
「我輩がこんなに大変な目にあってんのにさー!『そんなこと』呼ばわりなんでありますよ!?ってゆーか、我輩がガンプラに興味がなくなること以上の緊急事態って何!?」

ピコ

「眠いのか何なのかわからないけど、ちょー不機嫌で暴力までふるうし!!我輩のこと女扱いするなら、そーゆーとこまで気ぃ使って欲しいであります!おー痛いっ!!」

ピコピコ

「大体、アイツってば昔からあーなんだよね。いつも無駄に暑苦しいくせに、ときどきどっか冷たいってゆーか冷めてるってゆーか――」

ピコ、ピタ

ケロロに影が重なって、足音が止まる。

「――て、え?」

気づくと、いつの間にかクルルが自分の目の前まで来ていて、ケロロは一瞬ドキリとする。
「で?」

逆光で表情の見えないクルルが手を伸ばしてきたので、ケロロは思わず一歩下がる。と、背中にラボの壁が当たった。
その冷たい感触に、また一段、心臓の動きが早くなる。

「ゲ、ゲロ…」


クルルはケロロの帽子の端を手に取り、
「俺にどうしろって?」
と、ケロロの顔を覗き込んだ。

「ガンプラに興味の出る薬か、先輩に仕返しするマシンでも作ってやろうか?」
「や、我輩は――」

もちろん、と続けてクルルはニヤッと笑うと
「ギブアンドテイクだぜぇ?」
と言って、妙に優しい手つきでケロロの帽子をそっと撫でた。
その瞬間、ケロロの背中が一気に粟立った。

「遠慮するであります!」

ケロロは反射的にクルルの手を振り払い、風のようにラボを飛び出した。




――なにアレ!なにコレ!何今の!!


ケロロの要望を汲み取り、提案し、その見返りを要求する。
「ギブアンドテイク」
クルルは別に、いつも通りの主張をしただけだ。

――でも、違う。なんか違う!

突然自分の中から湧き上がった、自分でも良くわからない感情から逃げるように、ケロロは一目散に走った。


すると。

ドシンッ


曲がり角から出てきた何かにぶつかり、勢いでケロロは後ろに倒れこんだ。

「ケロロくん?
 どうしたの、こんな時間に」
「ド…ロロ?」

ケロロの症例について、参考になる文献はないかと図書館で調べ物をしているうちにこんな時間になってしまった、と説明している間も尻餅をついたままのケロロに、ドロロが手を差し伸べる。

「大丈夫?ケロロくん」

いつも通りの優しいドロロ。

なのに。
な、筈なのに。

「部屋まで送ろうか?」
「いらないであります!」

その笑顔が怖くて。

「え、ケロロくん…」
唖然とした声で呼びかけるドロロを置き去りにして、ケロロはその場を逃げ出した。







どこをどうやって走ってきたのか。
ケロロは自分の部屋にたどり着くと、ベッドに飛び込み、すっぽりと布団を頭から被って包まった。

――おかしい、おかしい!皆、おかしいであります!!
確かに、外見が変化してしまったのは自分だったけれど。

――皆は中身がおかしくなってしまったであります!

自分達に起こった変化は、新種のウィルスか、未知の侵略型宇宙人か、はたまた侵略作戦の後遺症かペコポンの汚染物質か。

――ずっとこのまま元に戻らなかったらどうしよう…

ケロロは小さく震えながら、ぎゅっと目を閉じた。





続く

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ケロロはなんかすっかり怯えているようだけど、なんてことはない、クルルはちょっとからかっただけ。
夜になってやっと不安に思い始めたところ、ギロロとのこともあって、神経が過敏になってたんだねー。
ドロロは完全に誤解。(でもないのかな、どうなのかな)一度そう思っちゃったら、そうとしか見えない思考回路にはまってしまったらしい。
自分に向けられる、いまだかつてない好意(ってゆーか、欲望?かな。ケロロはそれが好意だとも気づいていない)がただただ怖い…ってゆー状態だと思ってクダサイ。
(あー、このケロロはノーマルなんだな、きっと)

そして例によっておまけ描いてみました。
クルケロとドロケロにしようと思ってたんだけど、なぜかギロケロDeath。
それでもよろしければこちらからどうぞ。
本編とはなんら関係のない(3のおまけともつながっていない)、妄想の垂れ流しです。