あの頃の君に 2




「次はかくれんぼしようぜ!ケロロもどき!」

ドロロが地下基地へ行くと、子供の元気な声と大きな足音が聞こえた。

「あれ?一晩でずいぶん大きくなったねぇ、ギロロくん」
「そうなんでありますよ、成長のスピードが上がったらしくてさ。言葉が通じるようになったのはイイけど、これはこれで大変なんだよにぃ」
「当時の記憶も残ってるみたいで、我輩なんか『ケロロもどき』扱いでありますよ」
遊べ遊べと纏わりつくギロロを困ったように、でもどこか嬉しそうに交わしつつ会話するケロロ。

「我輩はドロロと話があるから、向こうでタママと遊ぶであります」
と言うと、ギロロは素直にはぁいと返事をした。
「ま、大変なのも今日までだと思うぜぇ」
「というと?」

ドロロの問いに、手元の資料を見ながらクルルが答える。
「このまま成長のスピードが加速していけば、明日の朝には元通り…とまでは行かなくても、まぁ成体にはなってるだろうなぁ。明日の夜か、遅くても明後日には完全復活だぜぇ」
「明後日でござるか。とにかく無事元に戻れそうで良かったでござるな、隊長どの」
そうドロロがケロロに向かって言うと、ケロロは何か考えているのか、ボーっとして返事もしない。

「…ケロロくん?」
名を呼ぶと、ケロロはハッとして、
「そ、そうでありますな」
と上の空で答えた。それから、
「明日には大人になっているなら、事情も説明しなくちゃならないでありますなぁ」
と呟いた。
「今日みたいに『ケロロもどき』って訳にはいかねぇだろうなぁ」
「そうでござるな。多少の説明はないと、ギロロくんも混乱するだろうしね」
「っちゅーわけで、ドロロよろしく」
「えぇっ!?」
「だって我輩、怒られるのやだしぃ」
「確かに、隊長が説明するより適任かもなぁ」
「そんなー!!」






*





次の日、クルルの予想通り、ギロロはあの頃まで成長していた。

「なるほど…。俄かには信じられんが、お前が言うなら間違いないのだろう」
「身体的になんら問題はないし、明日には元に戻る訳だから心配はないでござるよ」
「うむ。…元に戻る、というのがいまいちピンと来ないのだが、俺は今未来の世界にいる、ということなのだな?」
「正確にはちと違うが、説明もめんどくせぇし、そう思っててもらって構わないぜぇ」

「…適当なヤツだな」
チッと舌打ちが聞こえそうな口ぶりで呟く、と。

「適当といえば、ケロロはどうした。アイツが小隊長なのだろう?」

「それが――」
答えようとするタママをさえぎり、ドロロが前に出た。そして、
「隊長殿は、今回の一件の後処理の為、本部まで出向いているでござる」
「えっ、兵ちょ――」
「もし良かったら、基地内を案内するでござるよ。興味があるでござろう?」
タママは一言も口を挟ませてもらえないまま、ドロロはギロロを連れ出してしまった。
「ちょっ、今のどういうことですか?軍曹さんは本部になんか行ってないですよね!?
 どうして今朝から行方不明だって伍長さんに教えてあげないんですかぁ」

興奮して声が大きくなったタママの頭を、クルルはファイルで軽く打った。
「イテ!」
「…ガキは余計なこと考えなくていいんだ」
「明日んなりゃ全部元通りなんだから、隊長を探しになんざ行くなよ」
「曹長さんは軍曹さんがどこに行ったか知ってるですかぁ?」
「知らねーよ」


そして。
ケロロは夕刻を過ぎても戻らず、ようとして行方が知れぬまま、夜は更けていった。



続く


まだ友情以上になりません。ってゆーか、ギロケロにすらなってません。(むしろクルタマの気配がします
味噌は次なんですよ、次!ってことで、ひとつよろしく。